Crossy Road (クロッシーロード) 大人気の謎

突然ですが、「Crossy Road (クロッシーロード)」というゲームをご存知ですか?

オーストラリア発のスマートフォンゲームなのですが、なんとこのゲーム、たった3人で開発して1億ダウンロードを突破、10億円以上の収益をあげているモノスゴイゲームなんです。

SG Labsも小チーム構成なこともありまして、今回は、少人数チームで大人気ゲームを作るヒントを知るべく「Crossy Road」の秘密に迫りたいと思います。

Crossy Road って何?

  • Hipster Whale(ヒップスターホエール)というオーストラリアの独立系ゲーム会社が開発したスマートフォンゲーム(「Crossy Road」公式日本語ページはコチラ
  • タップとフリックの操作で、障害物をひたすら避けて進んでいくアクションゲーム。
  • F2P(Free to play) でアプリ内課金あり。
  • プラットフォームはiOS(リリース:2014/11/20)とAndroid(リリース:2015/01/07)。
  • iOS/Android 合わせて 1 億ダウンロード以上。
    • 初週で 100万ダウンロード。
    • 3ヶ月で5,000万ダウンロード、収益12億円。
    • 1DLあたりで24円。超高収益!ちなみに広告収入だけで1億円/月。
  • ピーク時はDAU(Daily Access User)600万(1日あたり600万人が遊んでいる)。

ココがすごい!

  • 作ったのはわずか 2人のゲーム開発者+グラフィッカー1人。(6週間で制作。1日16時間働いていた日もあったとか。)
  • 広告費 0。クチコミと自然流入のみ。
    Appleにフィーチャーされたり、有名YouTuberにたまたま目をつけられたりで人気に火がつく。あとはゲームの地力で広がる。
  • お金儲けではなく人気のゲームを作るのがゴール。
    射幸心を追求するようなスタイルではなく、本当にハマっちゃう”ゲーム”プレイを作る。
  • 当初マネタイズは深く考慮していなかった(!)
  • 以下の 3 つを完璧に仕上げる(これの追求に半分の時間費やした)。
    1. リテンション [何度も遊ばせる]
    2. バイラル性 [ソーシャルで拡散させる]
    3. エンゲージメントループ [どんどん深みにはまる]
  • それ以外のことは「再発明」。

…と、簡単な紹介ではありますが、ともかくCrossy Roadが 少人数・低コスト・短期間の開発で面白さと高収益を実現したすごいゲーム であることはおわかりいただけたかと思います。

人気を生み出す3条件

それではここからはもっと具体的に、世界的人気に結びついた Crossy Road の特性を見ていきましょう。 上記紹介の最後に挙げた、開発者がとても重要視したという「リテンション」「バイラル性」「エンゲージメントループ」の3条件に基づいてCrossy Roadの特性を分類しながら、人気の秘密を探りたいと思います。

リテンション [何度も遊ばせる]

リテンションは、

リテンション(Retention)とは、維持・保持といった意味合いの言葉。「リテンションマーケティング」は、既存顧客との関係を維持していくためのマーケティング活動全般を指します。

と、説明されている。 (「ゲームアプリ業界で注目される『リテンションマーケティング』、その効果は? (1/2):MarkeZine(マーケジン)」より)

単純明快

  • 基本一本道のコースをほぼタップだけで進む。フリック操作での移動もあるが、たまに使う程度で操作できる。
    タップのみだと飽きるし、タップ・フリックどちらもだと忙しすぎる、バランスが絶妙。
  • 葉の壁がない。チュートリアルやメニューにおいて文がほとんどなく、一目見てわかる仕様になっている。
  • チュートリアルから自然と本編へ入るようなシームレスな設計。メニューであっちを選び、こっちを選び…という操作もない。ゲーム内容と同様こちらも一本道。

ストレスフリーな操作性

  • するする動く。引っかかりのない自然な動き。
  • 理不尽な設定はなく、失敗は自分のミス。
  • 効果音がいい。操作感にマッチしつつ耳にうるさくない音。
  • ミスしてからリスタートまでがすぐ。
  • 誤爆しづらい。ポーズ解除やフォアグラウンドに戻ったとき、一時停止状態から、3秒のカウントダウンの後、自動で再開する。
  • ダイアログが出ないので邪魔される感じがない。(End Screen Banner System)
  • レビューお願いのタイミングがだいぶ後で出る。それもハイスコアたたき出したときなど。
    気分が盛り上がってるときにお願いされると、悪くない気がする。

広告の出し方がうまい

  • 広告に対して不快感を感じづらいしくみ。
  • たまに、「動画広告見るとコインゲット!」ボタンが出て、ボタンを押すと動画広告が表示される。ボタンは押さなくてもよく、見たくなければ無視してそのままスタートボタンをポチッできる。(ダイアログではないので、動画広告ボタン画面を閉じる必要なし)
  • ちなみに動画広告は15秒。
  • 見終わるとコイン20個ゲット。 20個は結構なお得感。(コイン100個でキャラクターのガチャができる)
  • なので、また押そうかなという気分になるが、たまにしか出ない、ので出たときついつい押してしまう。

▲「EARN (c)」のボタンを押すと動画が始まりコインをゲットできる。そのままプレイボタンを押してもOK。

ギフトのしくみがうまい

  • ギフトゲットのタイミングがうまい。
    • 初回プレイのゲームオーバー時にコイン100個もらえる。
    • 初回ギフトから3分後にまたコインがもらえる。
    • さらにその6分後、さらに30分後、とコインがもらえる。

    という具合に、焦らしつつも長すぎず頻繁すぎずの間隔でギフトがもらえる。
    (ちょっと遊べば 3 分なんてすぐ。前のめりに遊べば 6 分なんてすぐ。一心不乱に遊べば 30 分なんてすぐ!)

  • 一度に100個以上もらえることも。大盤振る舞いではないけれど、キャラクタ1体分のコイン(後述)が一度にもらえるお得感。
  • ギフトのタイミングと内容の絶妙さがついついゲームを続けさせる。「もう少し遊ぼうかな」という動機付けになっている。→エンゲージメントループ要素でもあるかも。

バイラル性 [ソーシャルで拡散させる]

バイラル・マーケティングは、

口コミを利用し、低コストで顧客の獲得を図るマーケティング手法。情報の広まり方がウイルスの感染に似ることから、「ウイルス性の」という意味の「バイラル」の名を冠する。

と説明されている。(「バイラル・マーケティング – Wikipedia」より)

SNSとの親和性

  • ポラロイド機能
    • ゲームオーバーになった瞬間のスクリーンショットを、まさにゲームの中で写真撮影したかのような構図で、綺麗に、自動的に撮ってくれ、そのまま SNS にシェアできる機能。スクリーンショットの際には「カシャッ」とカメラで撮られたエフェクトが出る。
    • プレイヤーが自分で撮るには難しいタイミングで、またプレイ画面とは異なる角度からの面白いスクリーンショットを撮ってくれるのでシェアしたくなる。
  • キャラクタが話題
    • 新しいキャラクタ、特に隠れキャラが追加されると、SNS で話題になる。広まる。ちなみに、ゲームの構成をアップデートしやすいように設計されており、キャラクタを追加するのは簡単とのこと。

▲ポラロイド機能で撮影されたゲームオーバー時のスクリーンショット。ユーザーでは撮影が難しい角度&タイミングで撮ってくれる。

エンゲージメントループ [どんどん深みにはまる]

エンゲージメントループは、

モチベーションに基づいてユーザーが行動し、それに対してフィードバックが行われ、そのフィードバックによってユーザーはさらにアクションを起こすというのが基本構造。

と説明されている。(「ゲーミフィケーション(4)~ゲームデザイン – PMstyle」より)

中毒性

  • 1ゲーム数秒で終わるかもしれないし、延々と続けられるかもしれない、という中毒性の高いゲームプレイ。

たくさんの魅力的なキャラクタ

  • 100種類以上のキャラクタ。
  • どのキャラクタも$0.99(100円)で確実にもらえる。
  • コイン100個でガチャができ、キャラ1個ランダムでゲット。そのコイン100個は、初回プレイでいきなり無料ギフトとしてもらえる!
  • 鳴き声とかリアクションが違う。⇔レアリティの差、性能差はない(!)
  • キャラクタによってステージの雰囲気が変わる。砂漠になったり、レトロ調になったり。
  • 隠れキャラクタは特定の操作(横歩きしまくる等)をするとゲットできる。つまり、お金をかけた人ではなく、いろんなやり方でゲームを楽しんだ人がゲットできる!
  • 課金限定キャラあり。コインを集めやすくなる色んな特典がある。

▲ゲットしたキャラクターの画像はこんな風に保存できます。これは情緒不安定なガチョウ。

いかがでしょうか。
「完璧に仕上げた」という開発者の言葉の通り、リテンション・バイラル性・エンゲージメントループの3つの条件を満遍なく、しかもいろんな形で満たしていますよね。 これほどまでのこだわりが、Crossy Road の人気を実現しているわけです。

F2Pの革新はこれから

開発者達は、F2Pの世界はまだ開拓が終わっておらず、もっと多くの革新がもたらせることを期待している、と呼びかけたそうです。

少人数、低コスト、短期間で世界的人気のスマホゲームが作れることを目の当たりにした今、SG Labsとしても積極的に人気アプリの開発を目指していきたい所存です。

おまけ

2015年8月20日(木)にスマートフォンアプリ『PAC-MAN 256』(iOS/Android)の配信が開始されました。 このゲーム、BANDAI NAMCO Studios Vancouver(バンダイナムコスタジオ・バンクーバー)とCrossy RoadのHipster Whale(ヒップスターホエール)による共同開発なんです。

そしてなんとこちらも国内ダウンロードランキングトップ(App Annie調べ)を獲得する人気ぶりとか! パックマンのコンテンツ力があるとはいえ、恐るべしHipster Whale…! です。 新しいゲーム会社を設立することも発表しているとのことで、まだまだ彼らの快進撃は止まらなさそう。
その勢い、見習いたいです。

参考